2月15日は「兼好忌」といって、鎌倉時代〜室町時代にかけて歌人や随筆家として活躍し日本三大随筆のひとつにも数えられる『徒然草』を書いた吉田兼好(卜部兼好)の忌日です。
『徒然草』といえば、『枕草子』『方丈記』と並んで日本三大随筆と呼ばれますが、どうも『徒然草』は、遁世的な考え方が強すぎるように感じます。
どんな困難があってもめげずに立ち上がることが人の生き方であり、清少納言の明るく前向きな姿勢こそ、現代に活かすべき精神ではないかと思っています。
- 日本三大随筆の比較:『枕草子』『方丈記』『徒然草』
日本三大随筆といえば、清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』、そして吉田兼好の『徒然草』が挙げられます。それぞれの特徴を比較すると、興味深い違いが見えてきます。
• 『枕草子』(清少納言)
平安時代の宮廷生活を背景に、美しいものを素直に愛で、楽しく生きることを大切にした随筆。日常のちょっとした喜びや、周囲の人々との交流を明るく描いており、「春はあけぼの」の一節は、四季の移ろいを感じる代表的な名文です。
• 『方丈記』(鴨長明)
鎌倉時代の戦乱や災害を背景に、世の無常を静かに語る。人生の儚さや、世の移り変わりを受け入れながらも、自らの生き方を模索する姿勢が見られる。「行く川の流れは絶えずして…」の冒頭文は、変化を前提とした人生観を示しています。
• 『徒然草』(吉田兼好)
鎌倉末期という混乱の時代に生きた吉田兼好が、遁世し、世の中を批判しながらもどこか達観している作品。哲学的な視点を持ちつつも、現実世界との接点を絶とうとする傾向が強く、どこか冷めた印象を受けます。
- 『徒然草』の遁世思想は、果たして正しいのか?
吉田兼好は『徒然草』の中で、人間社会の虚しさや不完全さを批判しながらも、そこから距離を置こうとする姿勢を示しています。
例えば、彼の考え方の根底には「この世は無常であり、執着せずに生きるべきだ」という思想があります。確かに、物事に執着しすぎると苦しみが増えることもあります。しかし、そのように世を捨てたからといって、世の中の問題が消えるわけではありません。
鎌倉時代末期は、武士による支配が強まり、社会が大きく変動していた時代でした。そのような混乱の中で、ただ現実から離れ、静かに生きることが本当に正しい選択だったのでしょうか?
『徒然草』の中には、社会を冷静に分析する洞察力が光る部分もありますが、一方で「世間から距離を置き、俗世に関わらずに生きるのが賢明だ」という考え方には、どこか無責任さを感じざるを得ません。
- 清少納言の前向きな生き方こそ、現代に必要な精神
これに対して、『枕草子』の清少納言は、まったく異なるスタンスを持っています。
彼女は、世の中の良い面に目を向け、美しさや楽しさを見出すことを大切にしました。例えば、「春はあけぼの」の冒頭部分では、季節の移り変わりを楽しむ視点が描かれていますし、「胸がときめくもの」という章では、日常の小さな喜びを大切にする姿勢が見られます。
どんなに世の中が混乱していても、人間は生きていかねばなりません。苦しい時こそ、小さな幸せを見つけ、明るく生きることが大切なのです。
『徒然草』のように「この世は無常だ」と嘆いてばかりいても、状況は何も変わりません。むしろ、清少納言のように「どうせなら楽しもう」と考える方が、前向きに人生を切り開く力となるのではないでしょうか。
現代においても、世の中には多くの困難があります。しかし、ただ世を憂うのではなく、どうすれば前向きに生きていけるのかを考えることが重要といえるのではないでしょうか。
- 苦難があっても、立ち上がることが大切
日本の歴史を振り返ると、どんな時代も困難に満ちていました。それでも日本人は、決して諦めずに立ち上がり、社会をより良い方向へと導いてきました。
吉田兼好のように「世の中は無常だから、距離を置こう」と考えるのか、清少納言のように「どんな時でも楽しむ心を持とう」と考えるのか。
現実から逃げるのではなく、たとえ困難があったとしても、それを乗り越えようとする姿勢こそ、人が生きる上で最も重要なことではないでしょうか。
今の日本社会も、さまざまな問題を抱えています。しかし、どんな状況にあっても、「生きることを楽しむ」「困難を乗り越える力を持つ」という精神を忘れずにいたいものです。
まとめ
日本三大随筆『枕草子』『方丈記』『徒然草』を比較し、それぞれの思想の違いを考察しました。特に、『徒然草』の遁世的な考え方に対し、『枕草子』の前向きな姿勢を評価し、「どんな困難があっても立ち上がることが大切だ」というメッセージを伝えました。
人生には苦しい時もあります。しかし、それを嘆くのではなく、楽しむ心を忘れずに、前向きに生きていくことが大切なのではないでしょうか。
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