11月23日の「勤労感謝の日」は、戦前の「新嘗祭」に由来します。新嘗祭は天皇が新穀を神々に捧げ、感謝と祈りを行う伝統行事で、1600年以上続く日本最古の祭祀です。柏の葉や古代箸を用いる独特の形式には、遥か古代の習俗が反映されています。「勤労感謝の日」が現世の労働を称えるのに対し、「新嘗祭」は過去・現在・未来を繋ぐ祈りの日として、日本の文化と精神性を象徴しています。古代から続く伝統の意味を理解し、次世代に継承することが大切です。
「祝祭日」という言葉の背景と新嘗祭の歴史的意義
よく耳にする「祝祭日」という表現ですが、実際には戦後の日本法には「祝日」しか存在せず、「祭日」はありません。戦前までの「祭日」とは、明治41年皇室令第1号の「皇室祭祀令」に基づく日であり、これが戦後に廃止され、代わりに「国民の祝日に関する法律」が施行されました。そのため、現在の法的には「祭日」という言葉は存在しません。
例えば、1月1日の元日は、戦前には「四方節」とされていました。また、11月23日の「勤労感謝の日」は、戦前には「新嘗祭(にいなめさい)」として知られていました。この「新嘗祭」が、現代においても重要な意義を持ち続けているのです。
新嘗祭の起源と伝統
「新嘗祭」は、天皇が新穀を神々に捧げる皇室行事であり、その起源は仁徳天皇に遡ります。つまり、1600年以上前から続いている日本最古の祭祀の一つです。この行事の前には、10月17日に伊勢神宮で「神嘗祭(かんなめさい)」が行われ、天照大御神に新穀が捧げられます。これを受けて11月23日に皇居で「新嘗祭」が行われる流れです。
新嘗祭では、天皇陛下が皇居内の神嘉殿で古代からの慣例に則り、柏の葉に盛られたご飯を古代箸でお召し上がりになります。この箸はトングのような形状をしており、古事記に記される須佐之男命の神話にも登場しています。また、柏の葉が用いられる理由は、大和言葉の「かしわ」が「炊葉」や「食敷葉」に由来し、古代の食文化を象徴しているためです。
新嘗祭が象徴する文化的意義
新嘗祭は、単なる皇室行事ではなく、日本文化の核心ともいえる深い精神性を反映しています。この行事において天皇陛下は、神々と共に新穀をいただき、感謝と祈りを捧げられます。この伝統は、仁徳天皇がさらに古い時代の習俗を復元し、それが今日まで続けられているという驚くべき歴史を物語っています。
古代の日本では、漆塗りの茶碗や高価な土器が既に存在していましたが、それにもかかわらず柏の葉が使われていることは、新嘗祭の起源が極めて古代に遡ることを示しています。さらに、柏の葉は冬でも落葉せず新芽を付ける特性から、「家運隆盛」を象徴し、古くから尊ばれてきました。
勤労感謝の日と新嘗祭の違い
「勤労感謝の日」は、戦後の法律により「新嘗祭」の代わりとして制定されました。しかし、その名前が示す意義には大きな違いがあります。「勤労感謝の日」が現世の労働を称えるものに対し、「新嘗祭」は過去・現在・未来を繋ぐ時間の流れの中で、自然や神々への感謝、そしてより良い未来を願う祈りの日です。
勤労感謝の日が個人の労働に焦点を当てるのに対し、新嘗祭は日本という国家とその歴史、伝統への感謝を軸にしています。この文化的な深さが、新嘗祭の本質的な価値を物語っています。
未来への提言
新嘗祭をはじめとする伝統行事には、日本という国のアイデンティティが詰まっています。これらをただの祝日として消費するのではなく、その精神性や文化的背景を理解し継承することが、これからの日本人に求められる姿勢です。新嘗祭が教えてくれるのは、過去の積み重ねに感謝し、未来への希望を胸に歩むという日本的な精神そのものです。
このような深い歴史と文化を次世代に伝えることが、私たちの使命ではないでしょうか。
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