総裁選の顔ぶれより重要なのは、誰と組み何を優先するか。地方現場の予算や生活に直結する連立の現実を踏まえ、国民第一の政治へ向けた三つの改革点を提案します。
1.「誰が総裁か」より「何を優先するか」――政局の熱と生活の温度差
石破総裁の辞任報道を機に、メディアは次期総裁レースに熱を上げています。小泉進次郎氏の名が急浮上し、高市早苗氏や他候補の動向も取り沙汰され、世論はにぎやかです。しかし、本質は「誰がトップか」ではありません。参院選を経て、10月4日の総裁選後に必要となるのは、連立の相手をどう組み合わせ、何を優先順位の一位に据えるかという設計です。
現状、自公のままでは過半数に届かず、第三勢力との連携が不可避。どの政党と組むかによって政策は変わり、同時に自民党内部の調整も大きく揺れます。中央の「絵姿」は、地方の選挙区構造や支部活動、さらには市町村レベルの行政運営まで直結します。人気やイメージで舵取りを決めれば、足元の暮らしに思わぬしわ寄せが生じます。問うべきは「顔」ではなく「中身」。国民の生活を守る合意形成と手順です。
2.連立の現実は、白線一本にまで及ぶ――県連・支部・地域実務の連鎖
連立相手の選択は、県連や各支部の候補者調整に直撃します。たとえば維新と組めば、地盤の関西では自民候補の擁立見直しが広範に起こり得ます。国会の数合わせに見える議論でも、地方では横断歩道の白線補修、橋梁の修繕、上下水道の更新といった「暮らしの現場」へ影響が波及します。
市町村の多くは、自主財源だけでは社会資本の維持更新が難しく、国の補助採択や中央とのパイプが欠かせません。中央に顔の利く議員が地域にいるかどうかで、年度内に白線が引き直されるのか、橋が安心して渡れるのかが変わります。連立の組み方ひとつが、地元の予算執行や工期に波紋を広げる――これが現実です。
だからこそ、総裁選は「誰が勝つか」の人気投票ではなく、「どの連立設計で、どの政策を優先し、どの地域課題を先に解くか」を競う場であるべきです。地方の実務の視点から見れば、政権構成の一手は、暮らしの手触りを変える一手でもあります。
3.人気の魔力と政策の現実――若さ・話術・イメージだけでは舵は切れない
若さや弁舌、ルックスといったイメージの強さは、政治において無視できない要素です。しかし、外国人受け入れの拡大、夫婦別姓、減税見送りなどの立場が大筋変わらないなら、看板の掛け替えだけで国民生活は好転しません。
都・国政・参院と続いた自民党の不振は、単なる「お灸」ではなく、生活の苦しさから出た実質的な不信の表れです。物価や賃金、食料・安全保障、輸入依存の脱却――優先すべき課題は明確です。イメージ整備より、政策実装と順序の組み替えが要諦です。
4.分断ではなく「力を束ねる」設計へ――共同体の知恵を現代に
日本社会は長い歴史の中で、大家族・相互扶助によって「力を束ねる」術を培ってきました。戦前は約8,000万人の人口に対し世帯数は約1,500万世帯。現在は人口が微減しても世帯数は約7,500万世帯と増え、核家族化・単身化が進行。所得も支出も分散し、生活の耐久力が落ちやすい構造になっています。
たとえば、各自は月収が小さくても、100人で共同生活すれば固定費が圧縮され、資金を積み上げ、事業化へ回す道も見えてきます。これはホームレスの比喩に限らず、地域・家庭・職場・NPO・中小企業にも共通の発想です。政策も同じで、点在する生活課題を「束ねて解く」ことで、初めて実効性が出ます。政治に求められるのは、対立を煽る構図ではなく、合意を束ねる制度設計です。
5.「国民を一番に」へ――三つの改革ポイント
ここまでの論点を踏まえ、改革の要所は次の三点に整理できます。
(1)国民生活を守る政策の最優先
物価・賃金・住宅・子育て・医療・エネルギー・食料の安全保障を、年内・年度内・中期(3年)で到達目標を区切って提示し、財源・人員・工程表を開示します。省庁縦割りを横断する「生活KPI」を閣議決定し、四半期ごとに進捗レビューを公表。
(2)歴史に学ぶ政治文化の回復
仁徳天皇の「民のかまど」や、徳川吉宗の目安箱に象徴される「民生先んじる」の原理を、現代行政に翻訳。パブコメや審議会を、単なる儀礼で終わらせず、反対意見の採否理由まで明記する説明責任を制度化します。
(3)透明性と責任ある運営
連立交渉の合意文書、予算配分のロジック、公共事業の地域配点、補助金採択の評価軸を可視化。政治資金・パーティ券の取扱いは、電子台帳とリアルタイム公開で「見える化」し、年次監査を義務づけます。結果は数字で検証し、未達時のリカバリープランを事前提示します。
6.総裁選の意義を取り戻す――「顔合わせ」ではなく「設計図勝負」へ
総裁選は、派閥の力学や人気の風向きで勝者を決めるイベントではありません。国民生活を守る工程表、連立後の政策配列、地方財政と現場実務が滞らないための予算手当――その設計図で競う場です。
誰が司令塔でも、設計図が空虚なら現場は動きません。逆に、設計図が実務に落ちるものなら、どの顔ぶれでも一定の成果は出ます。問うべきは「どうするか」。総裁選は、その答えを政策と工程で示す最高の機会です。
7.結び――人気より中身、対立より合意形成へ
政治は暮らしの延長線上にあります。横断歩道の白線が消えないこと、橋が安全であり続けること、上下水道が止まらないこと――地味でも確かな安心の積み重ねが、国民の豊かさを支えます。
利権や派閥よりも「国民を一番に」。人気の魔力に流されず、生活を底から支える設計を優先すること。総裁選の焦点はそこにあります。今日の一歩は、対立ではなく合意形成へ向かう意志の共有から。連立の現実、地方の実務、家計の実感――この三点をつなぐ政治こそ、次の一歩を進めます。



