現代社会の混乱をどう乗り越えるかを問う対談。
東郷潤先生と共に、恐怖支配から「共鳴の文明」への転換を語り、
その核心を「心の成長」と「善悪二元論を超えた理解」に見出します。
第一章 この世界は「魂の修行場」
東郷潤先生との対話は、「この現実世界は何のためにあるのか」という根源的な問いから始まりました。
東郷先生は、「この世は魂の成長の場であり、人生は修行の学校である」と語ります。
戦争、占領、社会の混乱――それらすべての出来事は、心を磨くために与えられた学びの機会でもあるのです。
苦しい出来事や試練は避けがたく訪れます。
人間関係の衝突、仕事の失敗、経済的な苦境・・・。
そうしたときに私たちは、つい“外の世界”を何とかしようと必死にもがきます。
けれども、東郷先生はこう語ります。
「一歩引いて、自分に問いかけてみるんです。
この出来事は自分に何を教えてくれているのか」と。
つまり、出来事を“敵”としてではなく、“教師”として受けとめる。
嫌な出来事の背後にあるメッセージを見つけ、自らの成長に転化していく。
そのとき、ふしぎと問題が解決に向かったり、心が静まったりする。
掃除をして気分が晴れるのも同じ理(ことわり)で、内側の整えが外の現実を変えていく・・・
この気づきこそ、現実を「修行の場」と捉える智慧です。
第二章 世界を変える第一歩は「心の統一」
共振・共鳴・響き合いの社会をどう築くのか。
その問いに対して東郷先生は、「まず自分の心を整えることが出発点です」と断言します。
社会改革も、政治運動も、まずは個々の心の在り方から始まる。
心が乱れたままでは、どんな理想も現実にはなりません。
多くの人は「出来事が心を変える」と思いがちですが、実は逆です。
心が先にあり、その心のあり方が現実をつくっています。
無意識(阿頼耶識)を含む深層の心の動きが、出来事を引き寄せる。
だからこそ、世界を変えるには“心の構造”を変える必要があるのです。
しかし、心を整えるためには前提条件があります。
それが「心の統一(integrity)」です。
たとえば禁酒を誓った1時間後に酒を飲んでしまう・・・
そのように心が分裂していれば、外の力(権威や恐怖)に頼るしかなくなります。
自分の中に価値基準を確立し、善悪や命令によって動くのではなく、
内なる声に従って行動できるようになってこそ、真の自由が生まれるのです。
共振共鳴響き合いとは、外から命じられてするものではなく、
「心の中心」から自然にあふれ出るもの。
それは“内から外へ”流れ出るエネルギーであり、
恐怖によって支配されてきた旧文明の構造を逆転させる力です。
第三章 善悪二元論を超えて、内なる美を見出す
対談の後半では、人間の心の奥に潜む「おぞましい感情」についても語られました。
人は誰しも、自分の中に目を背けたくなるような闇を抱えています。
しかし、それを「悪」と決めつけて抑圧すれば、やがてそれは暴走します。
戦うべき“悪”として心から締め出すのではなく、
その奥にある「歪み」と「求める美」を見つけ出すこと――これが鍵です。
たとえば、人を傷つけたいという衝動の裏には、
本当は「愛されたい」「理解されたい」という願いが隠れている。
それを否定せず、奥に潜む純粋な想いを見つめるとき、
心は癒え、抑圧から自由になります。
それは、ヘドロの中に埋もれたダイヤモンドを磨くような作業です。
東郷先生は、「最も醜いと思っている欲望の中に、
実は最も美しい真実が隠れている」と言います。
その宝石を掘り出し、光を当てることが、
善悪の二元論を超えた“白洲(はくしゅう)”の世界――
すなわち新しい文明への扉を開く道なのです。
結章 共振・共鳴・響き合いの文明へ
外の世界を変える前に、自分の心を磨く。
恐怖と命令に支配された構造を、共鳴と信頼の構造へ転換する。
それこそが、人類が新しい文明段階へと進むための「最低条件」だといえます。
共振共鳴響き合いの社会とは、
誰かに命令されて生きる世界ではなく、
互いの心が呼応し合う世界です。
一人ひとりが自らの内にある光を見つめ、
それを外の世界に広げていくとき、
初めて“結び”の文明が形を現します。
ご覧になった方の心のどこかに、
「自分の中のダイヤモンドを探してみよう」という小さな灯がともれば幸いです。
この対談が、その最初の一歩のきっかけとなることを願っています。



