米中の覇権争いと中東の緊張に揺れる世界。今、日本は何を選び、どこへ向かうのか。幕末の知恵と歴史の視点から、これからの時代に必要な戦略と価値観を見つめ直します。

◉ 米中対立は「新冷戦」ではない──構造の違いと再編の可能性

現在の米中対立は、しばしば「新冷戦」と呼ばれますが、冷戦時代と大きく異なる点がいくつもあります。旧ソ連は経済的にアメリカに劣っていたのに対し、現代の中国は世界最大の輸出国であり、グローバル経済の中心プレイヤーです。

その一方で、代理戦争、経済制裁、イデオロギーの衝突など、冷戦時代と似た構造も見られます。台湾をめぐる緊張は、かつてのベルリンや朝鮮半島と重なる状況です。これらを総合すれば、今後起こるのは軍事衝突よりも経済圏の「陣営再編」である可能性が高いと言えます。

中国は日本の先端技術(とくに量子コンピュータなど)を狙い、政治や経済の影響力を強めようとしていますが、日本がどういう立ち位置を取るかが鍵になります。重要なのは「どちらにつくか」ではなく、「日本としてどう在るか」という自立した姿勢です。

◉ 中東情勢と「サラエボ再来」──局地戦から世界大戦へ?

中東の緊張も深刻です。イスラエルとパレスチナ、イランとサウジアラビアの対立、さらに大国の代理戦争と化す内戦が次々と発生しています。まるで第一次世界大戦前夜のバルカン半島──通称「火薬庫」を彷彿とさせる構図です。

第一次大戦は、サラエボ事件という一つの事件から始まりました。現在の中東でも、偶発的な事件が引き金となって、大規模な戦争へ発展する危険が現実味を帯びています。これに対して、私たちは「戦争が起こらない前提」に立たず、最悪の事態を想定した上で戦略的に備えることが求められています。

◉ 幕末に学ぶ──国家戦略を再構築せよ

今の日本の姿は、幕末の日本と重なる点が多くあります。当時の日本も、欧米列強の圧力に晒されながら、自らのアイデンティティと戦略を模索しました。福沢諭吉の啓蒙、薩長の政治的決断によって、日本は不平等条約を撤廃し、国家としての独立を確立します。

現代の日本も、米中の間で揺れる立場にあります。しかし、単なる中立ではなく、「日本とは何か」を問い直し、独自の戦略を築くことが必要です。そのためには以下の4つの柱が重要になります。
 1. 農業と食料の自立
経済戦争や有事に備え、自国の食を守る体制づくりが急務です。
 2. 防衛産業の強化
国産兵器・装備の充実は、安全保障のみならず災害対策にもつながります。
 3. 言語と教育を通じた価値観の発信
「いただきます」「ありがとう」「ごめんなさい」といった日本語に込められた精神性を、国内外に丁寧に伝えていく文化外交が求められます。
 4. アジア諸国との信頼のネットワーク
単なる経済的関係を超え、価値観を共有できる国々とのパートナーシップが、未来の平和の礎となります。

◉ 未来は予測ではなく選択──日本的思考で時代を導く

西洋では「時間は過去から未来へ」と流れますが、日本では「未来から現在、現在から過去へ」と流れるとされます。つまり、私たちの選択次第で未来は変わるという発想です。

未来は予測するものではなく、「選び取る」もの──だからこそ、歴史から学び、今をどう生きるかが問われています。

キーワードは次の三つ:
 • 「支配」ではなく「対話」
 • 「使う」ではなく「響き合い」
 • 「効率」ではなく「本質」

この3つの視座は、古来日本人が持っていた知恵であり、これからの世界を導く普遍的価値でもあります。人間らしさを尊重し、共に生きる道を探る「対話の時代」へと、歴史の転換点がいま動いているのです。

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