新貨条例によって誕生した「円」と十進法の導入、
本位貨幣から不換紙幣への移行、そして日銀の会計処理に至るまで、
明治以降の通貨制度の変遷を解説します。
🔹 円の誕生──形と制度の刷新
1871年に公布された新貨条例は、日本の貨幣単位を従来の「両・匁・文」から「円・銭・厘」へと改め、十進法を導入しました。
この背景には、国際通貨制度への対応と、明治政府による中央集権国家の構築がありました。円の名称は、丸いコインの形状に由来し、アメリカの制度に倣ったものでした。
🔹 金貨が主役だった時代から、紙幣が主役へ
新貨条例によって導入された金貨は、アメリカの1ドル金貨と等価に設定され、当初は現物の金貨が通貨の主役でした。
しかし、西南戦争などで財政が逼迫し、金の準備が枯渇。
国立銀行条例の改正により、金銀の裏付けのない紙幣=不換紙幣の発行が始まります。
1882年の日本銀行設立と1885年の紙幣発行によって、ついに紙幣が主役に座ります。
🔹 金が消え、帳簿に国債が載る──現代の通貨の裏側
本来、日銀の帳簿では金貨を担保として紙幣が発行されていました。
しかし現代ではその担保となる金が存在せず、代わりに「国債」が借方に記されています。
つまり、我々が日々手にする1万円札は、「政府が将来返せるはずの借金=国債」に基づいて発行されているという現実があるのです。
政府の信用、つまり将来の税収が、通貨の価値を支えているのです。
