平安京遷都と時代祭の成り立ち、蛤御門の変後の京都復興(小学校64校・琵琶湖疏水・発電・電車・博覧会・平安神宮創建)を辿り、民度=自立と教育の大切さを語りました。『白蛇伝』にも触れ、現代への示唆をまとめました。

平安遷都の日と『白蛇伝』—歴史は“今”を照らす灯りです

10月22日は、延暦13年(794)に桓武天皇が平安京へ遷都した「平安遷都の日」です。
季節は一気に秋めき、体調を崩しやすい時期でもありますが、だからこそ日々を整え、今日という日の意味を丁寧に見つめたいと思います。

番組ではまず、1958年に公開された日本初の長編カラーアニメ『白蛇伝』を取り上げました。
映像技術は今と比べれば素朴ですが、物語に宿る優しさや勇気は時代を超えて胸に響きます。
日本の映像文化が持つ“人の心を動かす力”は、単なる娯楽を超え、国の品格や子どもの感性を育てる大切な土壌です。
作品を通じて共有される喜びや感動は、教科書では伝えきれない学びをもたらします。
だからこそ、良質な作品が子どもたちの身近に戻ってくることを願います。
笑顔の子どもが増える国は、必ず強く、優しくなります。

平安京と時代祭—“厄を祓い、平安を祈る”決断の歴史です

平安遷都は、日照りによる飢饉、疫病の流行、近親者の相次ぐ死去、伊勢神宮正殿への放火、大雨による大災害など、不吉が重なった時代の大転換でした。
桓武天皇は占術にも基づき、長岡から山背国葛野郡(現・京都市)へ都を移し、名の通り“平安”を祈る新しい中心を築きます。

この遷都から千百年を記念して創建されたのが「平安神宮」で、ここを舞台に行われるのが京都三大祭のひとつ「時代祭」です(他は5月の葵祭、7月の祇園祭)。
時代祭は、古代から近代に至る装束行列が京都御所から平安神宮へ進む壮麗な祭礼で、単なる観光イベントではなく、“災いを転じて福となす”京都の歴史意識の体現でもあります。

京都は、元治元年(1864)の蛤御門の変による「鉄砲焼け」で、街の中心部811町・約2万7500軒を焼失しました。さらに明治2年、東京奠都によって政治経済の地盤が沈下し、人口は3分の2に減少。「いずれ狐や狸のすみかになる」とまで揶揄されます。
ここからの立て直しに、当時の市民は誇りをかけて立ち上がりました。

京都復興が示す“民度”の力—教育とインフラ、そして誇りです

京都復興の柱は明快でした。
第一に教育です。
市内に64の小学校を建設し、近代教育を徹底して進めました。
何を教えるかだけでなく、子どもたちの体験と感性を育てる“場”をつくることに意義があります。
民度は制度の上に降ってくるものではなく、日々の学びと共同体の経験から育ちます。

第二にインフラです。
琵琶湖疏水を掘削し、水力発電所を建設、電力を市中に配電して電気鉄道を敷設しました。
水・電気・交通という生活基盤の整備は、産業と雇用を生み、人の往来を活発にし、街に呼吸を取り戻します。

第三に産業振興と気概の可視化です。
京都博覧会を開催し、集大成として平安神宮を創建。桓武天皇を顕彰し、平安遷都千百年紀念祭(いまでいう万博)を挙行しました。
目に見える“祝い”は、内なる“誇り”を呼び覚まします。
祭礼の力は軽んじられがちですが、共同体の心を束ねる重要な社会装置です。

こうした官民一体の取り組みが示すのは、「民度=自立」の思想です。
自分で考え、自分で働き、自分で責任を持つ。
その上で支え合う。
依存の連鎖ではなく、自立が響き合う社会。

政治体制がどうであれ、民度が高ければ国はまっとうな方向へ進みます。
逆に民度が低ければ、どんな制度も形骸化します。
京都の復興は、この当たり前の真理を、汗と知恵で証明してみせました。

番組では、現代の教育の課題にも触れました。
子どもの笑顔が減り、外遊びの場が狭まり、体験の機会が乏しくなると、感情の幅が痩せ、言葉も貧しくなります。
報告書に追われる学校現場の窮屈さ、家庭での過度な“安全化”、スクリーンに偏る娯楽など、積み重なった小さな要因が、やがて社会全体の“感じる力”を弱めてしまいます。

解決の第一歩は、問題を問題として自覚することです。
動いているからこそ摩擦が生じ、課題が見えます。
焦点を絞り、一つずつ潰していけばいい。

祭りに参加し、地域で汗をかき、子どもと土に触れ、歴史の現場に立つ。そんな具体的な一歩の積み重ねが、民度を底上げし、国を健やかにします。
平安遷都は“厄を祓い、平安を祈る”決断でした。
時代祭は、その決断を忘れないための年中行事です。
『白蛇伝』が教えてくれるのは、物語に宿る力で心を耕すこと。
教育・インフラ・産業・祭礼——京都が復興で選んだ四つの要は、いまの日本にもそのまま通用します。

笑顔の子どもが増える社会をつくること。
自立した大人の背中を見せること。
地域の誇りを取り戻すこと。
歴史に学び、今日の暮らしに落とし込み、明日の行動へつなぐこと。

10月22日は、その原点を思い出すのにふさわしい日です。
さあ、顔を上げて、眉間をひらき、笑顔で一歩。平安の名に恥じない“静かな強さ”で、今日もいってらっしゃい。

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