私たちは、空いている時間があると、つい何かで埋めようとします。社会もまた、効率化や合理化によって「無駄」をなくすことを求めてきました。けれど、すべてを埋め尽くしたところに、人や新しい出会いが入ってくる場所はあるのでしょうか。時間にも、心にも、そして社会にも必要な「余白」。それは何もない場所ではなく、自分以外の誰かや、まだ見えていない大切なものを迎えるための場所なのかもしれません。

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余白は、大切なものを迎えるためにある。
予定表に空いている時間があると、私たちはつい、そこに何かを入れたくなります。
せっかく時間があるのだから、仕事をしよう。
本を読もう。
勉強しよう。
何か有意義なことをしよう。
現代社会では、「空いている」ということが、どこか「もったいないこと」のように思われがちです。
本当にそうでしょうか。
たとえば家族から突然、「ちょっと話したいことがあるんだけど」と言われたとします。
予定がぎっしり詰まっていたら、「あとにして」と言ってしまうかもしれません。
けれど、そこに少し余白があれば、「どうしたの?」と向き合うことができます。
その話が、もしかしたら、その人にとって、とても大切な話かもしれません。
人生には、予定していなかった出来事があります。
出会いがあります。
ふと耳にした言葉があります。
思いがけず誰かから相談を受けることもあります。
そして、ときには何もしていない時間に、
「あ、そういうことだったのか」
と、それまで見えなかったものが見えてくることもあります。
そうしたものは、予定表には書けません。
いつ来るのかもわからない。
何が来るのかもわからない。
だからこそ、それを迎える場所を、あらかじめ少しだけ空けておく。
それが「余白」なのかもしれません。
余白は、空っぽなのではありません。
まだ名前のない出会いや、
まだ言葉になっていない気づきや、
誰かの大切な話が入ってくるために、
扉を開けて待っている場所です。
ところが私たちは、この「余白」を、いつの間にか社会からもなくしてきたのかもしれません。
近代社会は、生産性を高め、効率を上げ、無駄をなくすことで豊かになってきました。
それによって私たちは、たくさんの恩恵を受けています。
けれど、効率化を突き詰めていくと、やがて不思議なことが起こります。
人間まで「余剰」と呼ばれるようになるのです。
「余剰人員」という言葉があります。
けれど、本当に「余った人」などいるのでしょうか。
企業も組織も、国も行政も、
すべては人のためにあるのではないでしょうか。
人を幸せにするためにつくられた仕組みが、効率を求めるあまり、人を「無駄」と考えるようになったとしたら、どこかで目的と手段が逆転しています。
十七条憲法の第十五条に「背私向公」という言葉があります。
「私に背き、公(おおやけ)に向かう」。
自分だけの利益ではなく、より多くの人が安心して暮らせるほうへ向かう。
日本では長い間、そうした姿勢が大切にされてきました。
江戸時代の武士も、禄高に応じて多くの人を抱え、その暮らしを支えていました。
現代の感覚なら、「そんなに人を雇ったら非効率ではないか」と思うかもしれません。
けれど、そこには別の観測点があります。
どれだけ自分の取り分を増やしたかではなく、どれだけ多くの人を養うことができたか。
そこにもまた、「公」という考え方があったのではないでしょうか。
そして、もっと身近なところにも、かつての日本人の「余白」はありました。
たとえば喧嘩になりそうになると、
「表に出ろ!」(笑)
家の中で暴れたら、物が壊れて、その家の人に迷惑がかかります。
だから、喧嘩をするなら、まず表に出る。
もちろん、喧嘩を勧めているのではありません(笑)。
おもしろいのは、どれだけ頭に血がのぼっていても、
「人様には迷惑をかけない」
という場所だけは残っていたことです。
怒りですべてを埋め尽くさない。
そこに、ほんのわずかな心の余白がある。
その余白に、「自分以外の誰か」が入ってくるのです。
考えてみれば、余白とは、単なる空き時間ではないのかもしれません。
自分だけですべてを埋め尽くさないこと。
時間にも余白を残す。
心にも余白を残す。
そして社会にも、人が入ってこられる余白を残す。
効率だけを考えれば、それは「無駄」に見えるかもしれません。
けれど、人が生きるうえで本当に大切なものは、そんな余白の中にやって来るのではないでしょうか。
今日一日、ほんの少しだけでも、
予定にも、心にも、余白を残してみませんか。
そこに何がやって来るのか。
それは、まだ誰にもわかりません。
だからこそ、
余白は、新しいものを詰め込むためではなく、大切なものを迎えるためにあるのです。
——今日も良い一日を♪
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