難しい話を聞いたときは感動したのに、あとで何も説明できなかった――そんな経験はありませんか。実は、話がうまい人とそうでない人の違いは「知識量」ではありません。決定的な差は、ただ一つ。この記事では、人を動かす言葉の正体と、人が難しい理屈に惹かれてしまう心理の仕組みを、誰にでも分かる形で解き明かします。

難しい話を聞いたあと、何も説明できない経験はありませんか?

難しい話を聞いたとき、「すごい話を聞いた気がする」と思ったのに――、あとで振り返ると、何ひとつ説明できない。
逆に、別の人の話はすぐ理解できてしまい、「なぁんだ、当たり前の話だったなあ」で終わる。

ところが後になって気づきます。
本当に役に立っているのは、後者だった。

この違いには、はっきりした理由があります。

この仕組みがわかると、本当に価値ある話と、そうでない話がはっきり見分けられるようになります。

■結論:話のうまさの正体

話や文章がうまい人の正体は何か。
語彙の多さでも、知識量でもありません。
「話の構造を理解している人」です。

■説得力は言葉ではなく構造から生まれる

人が納得するのは、言葉が美しいからではありません。
論理が整っているからです。

たとえ初めて聞く内容でも、
 • 前提
 • 理由
 • 結論
がそろっていれば、人は自然に理解できます。
これが「話の構造」です。

逆に、どれほど立派な言葉を並べても構造が崩れていると、人は違和感を覚えます。

つまり納得とは、話の中身ではなく、組み立て方で起きるのです。
なぜなら脳は、すべてを検証すると疲れてしまうからです。

そのため人は、「分かりやすい」「筋が通っている」と感じた瞬間に、
「信頼できそう」と判断します。
これを脳の省エネ判断(ヒューリスティック)といいます。

■なぜ人は難しい話に惹かれるのか

ここで重要な現象があります。
人は、分かりやすい話より分かりにくい話を「深い」と感じやすいのです。

理由は単純です。
「難しい=高度」という連想が働くからです。

理解しにくい話を聞くと、人はそれを高度だと感じます。
すると無意識に話し手を「自分より上」と見なし、努力して理解しようとします。

そして、苦労して理解できた瞬間、
「価値ある話だった」と感じます。

この結果、脳内では次の逆転が起きます。
 • 分かりやすい真理 → 軽く見える
 • 難しい理屈 → 深く見える

■本当に深い話の特徴

本当に深い話には、必ず共通点があります。
 最初は簡単に見える。
 しかし考え続けるほど深くなる。

逆に浅い話は逆です。
 最初は難しく見える。
 しかし理解すると中身がない。

この違いは決定的です。
 前者は本質を語り、
 後者は言葉を語っているだけだからです。

■話がうまい人は何をしているのか

話がうまい人は特別な技術を使っているわけではありません。
やっていることは一つです。

「相手の頭の中に同じ構造を再現している」

つまり、相手の中に理解を作っています。

理解とは知識ではありません。
構造の共有です。

だから分かりやすく話す人には共通点があります。
 • 例え話を使う
 • 話の順番を守る
 • 定義を明確にする

■「順番」の正体

ここで言う順番とは、話し手の思考順ではありません。
「聞き手の理解順」です。

人の理解は必ず次の流れで進みます。
 ① 何の話か
 ② どういう意味か
 ③ なぜそうなるか
 ④ だから何なのか

つまり理解とは、「把握 → 定義 → 理由 → 結論」の順で進みます。
この順序が崩れると、途端に分かりにくくなります。

【分かりにくい例】(順番が逆)
  だからこれは構造の問題なんです。
  つまりヒューリスティックが働くわけです。
  前提として人間の認知は……

 聞き手はこうなります。
  「何の話?」
 内容ではなく、順番の問題です。

【分かりやすい例】
  人は難しい話を深いと思いやすい。
  なぜなら脳は省エネ判断をするから。
  この省エネ判断をヒューリスティックという。

 理解が自然に流れます。

話や文章では、「結論 → 理由 → 具体例 → まとめ」の順が最も伝わります。

■本物かどうかを見分ける方法

話し手が本当に理解しているかどうかは簡単に分かります。
それはたったひとつ、「別の言い方ができるかどうか」です。

もっと言えば、「小学生にも説明できるか」。

理解している人なら→ 何通りでも説明できます。
理解していない人は→ 同じ言い方しかできません。

理解とは暗記ではなく、構造把握だからです。

■なぜ真理は単純か

本質とは、余計なものを削ぎ落としたあとに残るものです。
つまり、ほんとうは「真理は単純」で、「誰にでもわかるもの」です。

複雑なものは真理ではありません。
それは、「真理に至るまでの説明」でしかありません。

つまり
  真理は単純
  解説は複雑
なのです。

■言葉に騙されないために

現代には、難しい言葉で深そうに見せる話もあります。
しかし見るべきは言葉ではありません。見るべきは構造です。
 • 前提は明確か
 • 因果は通っているか
 • 結論は自然か

ここを見るだけで、本物かどうかは分かります。

■結論

話がうまい人とは、言葉がうまい人ではありません。
「相手の中に理解を生み出せる人」です。

そして人が難しい理屈に惹かれるのは、
「真理に惹かれているのではなく
 理解できた自分に惹かれているから」です。

だから本当に価値ある言葉とは、難しい言葉ではありません。

「人の心の中に理解を灯す言葉」なのです。

■最後に一行

話のうまさは、語彙ではなく順番で決まります。

言葉は音ではありません。
人の中に理解を灯せるかどうかです。


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