多くの企業が経営計画を立てています。しかし、その多くは思い通りには進みません。なぜでしょうか。その原因は、意外にもシンプルです。「終わり方」が設計されていないからです。本記事では、従来の経営計画とは異なる「出口設計」という視点から、壊れない組織と持続する関係のつくり方を考えます。

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企業には、長期経営計画や中期経営計画があります。
経営計画は、未来に向かって目標を掲げ、そこに到達するための道筋を描くものです。
一見すると、合理的で、正しく、必要なものに思えます。
ところが現実には、多くの経営計画が思った通りには進みません。
途中で頓挫したり、形骸化したり、あるいは無理な拡大の末に歪みを生んでしまうこともあります。
なぜ、これほどまでに計画はうまくいかないのでしょうか。
実はその理由は、とてもシンプルです。
経営計画には、“終わり方”がない。これが失敗の原因です。
経営計画は、未来に向かって達成を期するものです。
売上、シェア、成長率など、
それらすべては、「どこまで伸ばすか」という設計です。
そしてそこには、ひとつの「前提」があります。
それが、「物事が思い通りに進む」という前提です。
しかし現実は違います。
市場も、人も、環境も、常に変化するからです。
思い通りに進まないことのほうが、むしろ普通なのです。
そのとき、出口が設計されていない計画は、どうなるか。
止めどきを失い、引き返せなくなり、最後は無理が積み重なって、
壊れるまで続いてしまうか、経営計画自体が忘れ去られます。
ここに必要なのが、「出口設計(Exit Design)」という視点です。
出口設計は、
・想定しうるあらゆる事態に備えて、
・何が起きても大丈夫な状態を築き、
・対外的にも対内的にも関係が壊れない状態を築く
ことを目的とします。
そのために、
最悪の事態を想定してこれに備え、
最良の状態を想定しながら、
どうすれば次につながる関係が保たれるのかを、最初に決めます。
すると、不思議なことが起きます。
すでに最悪の状態は想定済みです。
あとは前進するだけです。
そのとき、関係性の質が高まることを着地点とします。
すると途中で無理をしなくなるのです。
無理をしないから、破綻しない。
破綻しないから、長く続くのです。
では、具体的に出口設計はどのように行えばよいのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
実は、ごくシンプルな視点で十分なのです。
第一に、「どこでやめるか」を先に決めておくことです。
うまくいかなかったとき、どの時点で撤退するのか。
その基準をあらかじめ持っておくことで、無理な継続を防ぐことができます。
第二に、「誰との関係を守るか」を明確にしておくことです。
取引先、社員、顧客など、何があっても守るべき関係を定めておく。
これがあるだけで、判断がぶれなくなります。
第三に、「次につながる終わり方」を設計しておくことです。
たとえ一つの取り組みが終わったとしても、
信頼や経験が次に活かされる形になっているかどうか。
ここを見ておくことで、“終わり”が“断絶”ではなくなります。
この三つを最初に見ておくだけで、
計画自体が大きく変わります。
経営計画が失敗するのは、未来を描く力が足りないからではありません。
出口を数字目標だけに置いていて、関係性を見ていないことによります。
それによって壊れる関係性を考慮していないし、
最悪の事態を想定していません。
つまり、経営計画の「達成」だけを目的としていて、
関係性の良質化という出口の設計がされていないのです。
たとえば、経営計画を策定していたところに、コロナ騒動が起きた。
この瞬間に、経営計画は破綻します。
ところが出口設計は、コロナが起きようが起きまいが、
・撤退の方法が先に決まっている
・何が起きても絶対に護るべき対象が定まっている。
・どうすれば次に繋げられるかが形になっている。
だから崩れようがないのです。
むしろ、想定外が起きたときほど、本来の強さが現れます。
本来、日本社会は、出口の設計をとても大切にしてきた伝統を持ちます。
どう始めるかよりも、どう収めるか。
どう勝つかよりも、どう調和するか。
これは単なる美徳ではなく、
みんなが生き残るために必要な、壊れない仕組みをつくるための知恵であったのです。
未来を設計することは大切です。
しかし、それだけでは足りない。
「どう終わるか」を先に見ておく。
この視点を持つだけで、
計画は“押し進めるもの”から、“整えていくもの”へと変わります。
これからの時代は、何を達成するかではなく、どう終わるかが問われる時代になるのだと思います。
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