AIの進化によって、正解を出すことは、もはや人間の専売特許ではなくなりました。では、正解が機械から与えられる時代に、人間は何を引き受けて生きるのでしょうか。本稿では、不況や仕事の変化という現実から出発し、日本の歴史や精神性を手がかりに、「正解がない状況」に向き合う力について考えます。正しさを競うのではなく、場を壊さず、関係をつなぎ続けるという選択。それを役割ではなく「つとめ」として引き受ける生き方こそが、これからの時代に最も代替のきかない人間の価値になるのではないでしょうか。

はじめに 不況とAI時代の中で、私たちはどう生きるのか

長引く不況の中で、私たちの暮らしは、少しずつ、しかし確実に変わってきました。
物価は上がり、先行きは見えにくく、
「これから先、これまでと同じように働き、同じように暮らしていけるのだろうか」
そんな不安を感じておられる方も多いのではないでしょうか。

そこに重なって語られるのが、AIやコンピューターの急速な普及です。
これから先、全産業の多くの仕事が機械に置き換えられるとも言われています。
生産性や効率性を最優先してきた社会の流れが、このまま続けば、「働く場所」そのものが失われていくのではないか。そんな現実的な危機感も、もはや空想ではなくなってきました。

もちろん、技術の進歩そのものが悪いわけではありません。
AIは、私たちの生活を便利にし、多くの負担を軽くしてくれる存在でもあります。
問題は、その技術を、どのような考え方の上で使うのかという点にあります。

これまでの社会は、
「より早く」「より正確に」「より効率よく」
正解を出すことを、何よりも大切にしてきました。
この考え方は、近代の産業社会において、大きな成果を上げてきたのも事実です。

しかし今、その延長線上で、
人が余り、仕事が消え、関係が分断されていく現実が、
静かに、しかし確かに現れ始めています。

では、このような新しい時代において、
本当に必要とされる人材とは、どのような人なのでしょうか。
機械よりも早く、より正確に正解を出せる人でしょうか。
それとも、人間にしか引き受けられない、別の役割があるのでしょうか。

本稿では、この問いを手がかりにしながら、
日本の歴史や、日本人が長い時間をかけて育んできた思考のあり方に、目を向けてみたいと思います。

序章 新しい時代に必要とされる人材とは何か
――正解を出す人から、場を引き受ける人へ――

AIの進化によって、私たちはこれまで以上に、
「正解」を素早く手に入れられるようになりました。
調べものをすれば即座に答えが返り、
仕事の手順や判断材料も、機械が整えてくれる時代です。

こうした状況を見ると、
「では、人間は何をすればよいのか」
そんな疑問が自然と浮かんできます。

ここで一つ、押さえておきたいことがあります。
それは、「正解が出る問題と、正解が出ない問題」は、もともと性質が違うということです。

計算や手続き、条件が明確な判断であれば、
AIは人間よりも正確で、速く、安定した答えを出します。
この領域では、無理に人が張り合う必要はありません。

しかし、私たちが日々向き合っている現実の多くは、
そもそも「正解」が一つに定まらないものばかりです。

家庭の中での判断。
職場での人間関係。
地域や社会における利害の衝突。

どちらの言い分にも理があり、
どちらを選んでも、誰かが不満を抱く。
正解を出そうとすればするほど、
かえって場がこじれてしまう――
そんな経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。

こうした場面で、私たちが本当に求めているのは、
「正解」そのものではありません。
関係が壊れないこと。
翌日も、同じ場に立ち続けられること。
なのです。

Ⅰ.AIが正解を出してくれる時代に、人は何を引き受けるのか

正解を出すことと、判断することは、同じではありません。
正解とは、条件が揃えば導き出せる答えです。
一方、判断とは、答えが一つに定まらない状況の中で、
何を守り、何を先送りし、どの場に立ち続けるかを引き受けることです。

AIは、条件が与えられれば、最適解を提示できます。
しかし、
・その正解によって関係が壊れないか
・場が持続するか
・誰がその結果を引き受けるのか
といった点までは判断できません。

そこには、空気や関係性、これまでの積み重ね、
そして「この場を壊してはならない」という感覚が関わっています。

***

この先(Ⅰの続き〜Ⅶ結語)は、倭塾サロンHPに全文を掲載しました。
正解がない時代に「場を引き受ける」とはどういうことか。
日本の歴史と精神性を手がかりに、最後まで丁寧に掘り下げています。
続きはこちら(サロン記事)→【URL】
https://salon.hjrc.jp/?p=3114

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