気がつけば、世界のあちこちで「言い合い」や「分断」や「勝ち負け」が続いています。政治も国際関係もSNSも、どこか余裕がなくて、みんな少し疲れています。だからこそ議論が盛んになりますが、どれだけ重ねても世界は動かない。最近、そのことをはっきり感じました。必要なのは、難しい思想でも強い主張でもありません。「自立」と「関係性」。そして、あたたかく響き合う気持ち。じつはその小さな変化が、もうあちこちで芽を出しはじめています。

▼ 限界を迎えた文明

最近、ある討論番組に出演させていただき、あらためて痛感したことがあります。
それは、「討論」「議論」という文化そのものが、すでに文明として限界を迎えている、ということでした。
討論は、相手を打ち負かすための言語戦です。語源はラテン語の discutere(打ち砕く)。
つまり討論とは、最初から「破壊」や「勝敗」 が目的なのです。

結果、何が起きるかといえば、
 1 正しさの奪い合いが止まらない
 2 社会が分断し続ける
 3 政治が機能不全になる
 4 SNSが怒りの装置になる
 5 誰もが「疲労」を感じる

西洋文明では、悪を叩くことは正義です。
ということは、ひとたび悪(魔女)とみなされれば、火あぶりになる。
悪に対しては、どんなひどいことをしても許される。
だから正義というポストをめぐって争い合う。
そのために論争し、論破しようとする。
この結果、論破文化が、世界を動かすどころか、世界を止め、人々は疲れ果てています。
これは、いわば「負のループに陥ったアルゴリズム」そのものです。

結果として20世紀の国家モデルも限界を迎えています。
世界中どの国も
 ● 少子化
 ● 国家財政の危機
 ● 階級分断
 ● 国際競争の疲弊
 ● 民主主義の機能不全
という問題を抱えています。
世界中の国家という国家が、結果として同じ問題を抱えるということは、今の国家システムは、すでに「時代遅れのOS」になっている、ということです。

さらにいうと、宗教による救済さえも、世界規模で失効しつつあります。
このことは特に欧米で顕著な傾向となっています。
理由は単純明白です。
人々が宗教ではなく、「もっと普遍的な関係性」や「共鳴する生き方」を求め始めているからです。
これは、従来の「思想」というOSが、刷新される前兆です。

そしてこれら論破、正義、宗教に基づく思考法は、西洋的な国家モデルの根底でもあります。
国が国を競争で押さえつけ、強い者が弱い者を支配し、宗教が唯一絶対を主張し合う。
こうして20世紀までの人類は、ずっと「勝ち敗けの文明」を続けてきたといえます。

しかし、このモデルはもう限界です。
なぜなら、どれほど議論しても、どれほど打ち負かしても、現実は勝敗と収奪のループから一歩も外に出ることができなかったからです。

世界中で分断が進み、行き詰まり、対立と闘争が繰り返され続けています。
これだけ繰り返されたら、これはもう偶然の産物ではありません。
明らかな必然の結果です。

そしてこのことに、すでに世界中の多くの人たちが気づき始めています。
つまり、文明そのものが転換点(ティッピングポイント)を迎えているという、これはサインなのです。

▼ 世界の民衆に起きている変化と成熟

世界の文明が行き詰まる一方で、人類の民衆の内面に、確実に進行しているものがあります。
それは、
  調和したい
  共鳴したい
  共創したい
という渇望にも近い欲求の高まりです。
これらは、
  SNSがコミュニティ化している
  シェアすることがひとつの文化として育っている、
  近年のAIとの対話
  ファンコミュニティの相互交流

それらはいずれも「討論で勝つこと」を目的としていません。
人と人が互いに響き合う場を求めているものです。

そしてこのことが示すもの。
それが「人類の進化」です。
物質の豊かさや情報量では満たされない領域に、人々が自然に向かい始めているのです。

この成熟に、最も合致する文明を、日本はすでに持っています。

▼ 日本文化の再評価 —— 「関係性の文明」を残した国

1万年以上争いなく続いた縄文以来の日本古来の文化は、勝つための文明ではありません。
「関係性」を「整える」文明でした。
武士道も、しらす(知らす)統治も、村落共同体も、能楽も、お祭りも、
すべてが
「調和」「まつり合わせ」「共鳴」
を中心に組み立てられていました。

これらは、国家や宗教を絶対視することとは、まったく異なる文化性といえます。
世界がいま求め始めた価値観を、日本は万年の単位で磨いてきていたのです。
そうであれば、世界が「次の文明のモデル」を模索するとき、日本文化がふたたび注目されるのは自然な流れといえるのです。

▼ 次の文明モデル —— エネルギー・情報の次に来るもの

20世紀を動かしたのは エネルギー(石油)
21世紀を動かしたのは 情報(IT・AI)
そして次の時代を動かすものは——
「自立(independence)」と「関係性(Relation / Resonance)」です。

これは比喩ではありません。
AIの発展も、経済の構造も、個々人の幸福度も、社会の安定も、すべては「自立」と「関係性の質」によって左右される時代に入っています。

そうであれば、次の文明は、
● 勝ち負けではなく「振動数の同期」
● 個人は「中心軸」ではなく「響く存在」
● 成功は「所有」ではなく「共鳴」
● 安定は「支配」ではなく「関係性の自立」
に向かうしかありません。

このことについて、物質文明の後に来るものは精神文明であるという視点から、近年ウエルビーイングが推奨されるようになりました。
これは岸田内閣、石破内閣の総理演説の中にも織り込まれた、新たな時代への転換です。
けれど、多くの日本人は、ウエルビーイングという名称も知らないし、一般化していないし、国家的プロジェクトと言いながら、言い方は少々キツくなりますが、予算をかけているのに、何の成果もあがっていません。

なぜか。答えは明白です。
「豊かさ」はもう、物質(20世紀)でも情報(21世紀)では決まらないのです。
そして、精神性重視と言っても、そこに個々の、そして国家としての「自立」がなければ、すべては依存と支配、そして反発と分断のループに陥ります。

関係性の文化は、自立した者どうしでなければ成立しないからです。

繰り返しになりますが、
 依存は支配を生み、
 支配は反発を生み、
 反発は分断を生みます。

これが、西洋文明が何度も繰り返してきた「支配 → 反発 → 分断 → 争い」のループなのです。
そのループから抜け出す方法は、ただひとつ。
一人ひとりが自立し、響き合う力を持つこと。

ここが次の文明の核になります。

▼ ふつうの言葉で未来は動く

いわゆる思想家や評論家、大学教授などが、さまざまな未来像を提案しています。
それらには、常に陥りやすい4つの罠があります。
それは、
  むずかしい
  固い
  上から目線
  宗教っぽい

残念ながら、これらはすべて、関係性を断ち切る罠です。
新しい文明はそこからは、生まれません。

必要なことは、
 ● ふつうの言葉
 ● あたたかさ
 ● 笑顔
 ● つながりたいという素朴な気持ち
という、ごく平凡な「あたりまえ」の力です。
そんな「あたりまえ」にあたたかく感謝の心を持つことが、これからの関係性の文明のいちばんの基盤です。

むつかしい言葉は要りません。
響き合いの中で生まれる笑顔やあたたかさや、やさしさ。
不思議にも思えることですが、ほんとうに、そうした柔らかさが未来を拓きます。
なぜなら、個人が、団体が、地方が、国家が、それぞれ「自立」していくからです。

世界は、ねじ伏せて変えるものではありません。
様々な意味で自立した者同士の響き合い変わっていくのです。

▼ 関係性の文明へ

世界は、ねじ伏せて動かすものではありません。
支配や論争によって未来が拓かれた時代は、もう終わっています。

これから世界を動かしていくのは・・・国家の力でも、大企業の資本でも、宗教の権威でもありません。

それは、
「自立した者どうしが、互いに響き合う力」です。

これは理想論ではありません。
すでに世界中で、静かに、しかし不可逆な潮流として始まっています。

人と人が響き合うとき、
地域と地域が響き合うとき、
国と国が響き合うとき、

その「関係性」は、新しい文明を照らすエネルギーへと姿を変えます。

20世紀のように石油を燃やさなくても、
21世紀のように情報を争奪しなくても、

これからの豊かさは、
つながりの質から生まれるのです。

そして、この文明の原理を長い年月をかけて磨いてきた国があります。
それが、日本です。

縄文の共生、
武士の道、
能楽の響き、
村落の話し合い、
しらす統治の透明性——

日本は、世界がまだ言葉にできていない「関係性の文明」を、
万年の単位で育ててきた国でした。

だからこそ、
これからの人類文明のモデルは、
そのまま日本文化の再発見でもあるのです。

そして、この文明の担い手は特別な誰かではありません。

日々を丁寧に生き、
ふつうの言葉で語り、
だれかと響き合い、
あたたかさを手渡していく——

その一人ひとりが、文明の創り手です。

文明を変えるのは英雄ではありません。
「響き合う人たち」です。

世界を変えるために力む必要はありません。
革命を起こす必要も、悪を糾弾する必要もありません。

ただ、ひとりひとりが、
「自立した響き合う存在」として立つこと。

それだけで、新しい文明は、いつの間にか動き始めます。

物質の時代が終わり、
情報の時代が成熟し、
いま世界は——
関係性の文明へと舵を切りはじめています。

その先頭に立つのは、大国でも大企業でもありません。

気づいたあなたです。

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