人と人との関係は、近ければ近いほど良いとは限りません。親子も、師弟も、国と国も、それぞれの成長や変化に応じて、ふさわしい距離があります。大切なのは、近づくか離れるかではなく、互いの違いを尊重しながら、どのような未来を共につくっていくか。日本文化の「間(ま)」とRelation(関係性)から、良い関係の育て方を考えます。

今日のひとこと・近づくことだけが良いRelationではない。ときには距離を置くことも、お互いを大切にする関係のつくり方

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近づくことだけが良いRelationではない。ときには距離を置くことも、お互いを大切にする関係のつくり方。

私たちは、誰かと仲良くなろうとするとき、つい「もっと近づこう」と考えます。
もっと話そう、もっと理解し合おう、もっと一緒に過ごそう、もっと相手のことを知ろう。
もちろん、それらは、とっても素敵なことです。

けれど、良い関係というのは、必ずしも距離が近ければ近いほど良い、というものではありません。
たとえば、親子関係です。

小さな子供にとって、親はいつもそばにいてほしい存在です。
手をつないで歩き、困ったときには助けてもらい、悲しいときには抱きしめてもらう。
そうした親子の近さが、子供に安心を与えます。

ところが、子供は成長します。
幼い頃には何でも親と一緒だった子供も、やがて自分の友達をつくり、自分の考えを持ち、自分で判断するようになります。
小学生の頃には、親と手をつないで歩くことが嬉しかった子供が、中学生になると、
「もう一人で行けるよ」と言うようになる。
親としては、ちょっと寂しい(笑)。

けれど、それは親子の関係が悪くなったからではありません。
子供が成長したのです。
そして、その成長に合わせて、親子の「あいだ」に必要な距離も変わってきたのです。

親が手をつないで歩くことをやめたからといって、愛情がなくなったわけではありません。
むしろ、子供が自分の足で歩けるようになったことを喜ぶ。
そこに、親子の新しい関係が生まれます。

近くにいることが愛情になるときもあれば、少し離れて見守ることが愛情になるときもある。
人と人との関係には、そうした変化があるのだと思います。

1 距離が変わると、関係も変わる

人と人との関係を考えるとき、私たちはつい、相手という「個人(Entity)」に目を向けます。
あの人は親切だ、あの人は優秀だ、あの人は頼りになるなど、もちろん、そうした個人の特徴も大切です。
ですが、Relation(関係性)という観測点に立つと、少し違う景色が見えてきます。

人と人との関係は、それぞれの個性だけで決まるものではないからです。
二人の「あいだ」に、どのような関係が生まれているのか。
そこに目を向けることが大切なのだと思います。

たとえば、学校の先生と生徒の関係です。

入学したばかりの生徒には、先生が一つひとつ丁寧に教えることが必要でしょう。
けれど、生徒が成長して、自分で考え、自分で問題を解けるようになってきたら、先生の役割も変わってきます。

答えを教えることから、問いを与えることへ。
手取り足取り教えることから、自分で挑戦する機会をつくることへ。
先生が一歩下がることで、生徒が一歩前に進むことができるようになります。

それは、先生と生徒の関係が薄くなったということではありません。
むしろ、関係が育ったからこそ、生まれる変化です。

良いRelationというのは、必ずしも、いつも近くにいることではありません。
お互いが生き生きといられる「あいだ」をつくることなのかもしれません。

2 国と国との関係にも「距離」がある

このことは、国と国との関係を考えると、さらにわかりやすくなります。
世界には、さまざまな国があります。
それぞれの国には、それぞれの歴史があり、文化があり、伝統があります。
地理的な条件も違えば、国民の暮らし方も違います。
そうした国々が、互いに良い関係を築こうとするとき、すべてを同じにする必要があるでしょうか。

たとえば、日本とインドです。
日本とインドは、経済や文化、科学技術、安全保障など、さまざまな分野で協力関係を築いています。
けれど、両国は、歴史も文化も、外交上の立場も同じではありません。
インドにはインドの歴史があり、国際関係の中で培ってきた独自の判断があります。
日本には日本の歴史があり、日本として大切にしてきたものがあります。
両国は、すべての問題について同じ判断をするわけではありません。

それでも、互いの立場を尊重し、協力できる分野では協力する。
そこに、友好関係が育まれています。
つまり、良い関係を築くことと、同じになることは、必ずしも同じではないのです。
これは、国と国との関係を考えるうえで、とても大切なことだと思います。

相手の国の文化を尊重する。
相手の国の歴史を尊重する。
相手の国が、自らの意思で未来を選ぶことを尊重する。
そして、自分の国もまた、自らの歴史と文化を大切にする。

そうした互いの自立があってこそ、対等な協力関係が育まれるのではないでしょうか。

3 独立しているからこそ、結ばれる

ここで、もうひとつ考えてみたいことがあります。

国と国との関係では、「独立」という言葉が大切にされます。
独立とは、他国との関係を断つことではありません。
自分たちのことを、自分たちの意思で決められることです。
そして、独立した国同士だからこそ、互いの意思によって協力することができます。

もし、すべての国が同じ考え方を持ち、同じ文化を持ち、同じ判断しかしないのなら、そもそも国と国とが協力する意味も、ずいぶん違ったものになるでしょう。

違いがあるからこそ、学び合うことができる。
違いがあるからこそ、互いに補い合うことができる。
違いがあるからこそ、一つの国だけでは生み出せなかった、新しい可能性が生まれる。

これは、これまで何度もお話ししてきた「結び」の考え方にもつながります。

結びとは、違いを消すことではありません。
違うものが、違うままで、新しいものを生み出すことです。
そのためには、それぞれが自分自身であることが大切になります。

相手を尊重することと、自分を大切にすること。
その二つは、対立するものではありません。
むしろ、互いに自立しているからこそ、豊かなRelationを築くことができるのだと思います。

4 日本文化に見る「間(ま)」の智慧

日本には、古くから「間(ま)」という智慧があります。
たとえば、日本の伝統的な芸能では、音を出している時間だけでなく、音と音の「あいだ」も大切にされます。
能の舞台でも、動いている瞬間だけでなく、動きと動きの「あいだ」が、独特の緊張感や美しさを生み出します。
茶道でも、客と亭主が常に言葉を交わし続けるわけではありません。
言葉のない時間にも、相手を思いやる心が通い合います。
そこには、ただ何もない空白ではなく、意味を持った「間」があります。

西洋音楽も同じです。
ド、ミ、ソという三つの音が、すべて同じ高さ、同じ音になってしまったら、和音にはなりません。
それぞれが違う音でありながら、適切な関係を結ぶことで、美しい響きが生まれます。
これは、人と人との関係にも、国と国との関係にも通じるものがあるように思います。

違うものが、違うままでいる。
その違いを認め合いながら、互いに協力する。
そして、その「あいだ」から、新しいものを生み出していく。

そこに、結びの美しさがあるのではないでしょうか。

5 距離を置くことは、関係を断つことではない

ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。

「距離を置く」という言葉には、ともすると、冷たい印象があります。
けれど、距離があるということは、必ずしも関係がないということではありません。

たとえば、日本とヨーロッパの国々は、地理的には遠く離れています。
けれど、文化や学問、科学技術、経済など、さまざまな分野で交流を続けてきました。
地理的に遠く離れていても、深い信頼関係を築くことはできます。

反対に、国境を接している国同士であっても、必ずしも友好関係にあるとは限りません。
つまり、距離の近さと、関係の良さは、同じものではないのです。
そして、ここでいう距離とは、単なる物理的な距離だけではありません。

考え方の違いもあれば、文化の違い、立場の違いもあります。
それぞれが大切にしているものも違います。

そうした違いを、無理に一つにしようとするのではなく、それぞれの違いを認め合う。
そのうえで、どのような協力ができるのかを考える。
そこに、Relationの新しい可能性が生まれます。

大切なことは、距離をなくすことではなく、その距離を、どのような関係に育てていくかなのだと思います。

6 Relationは、時間とともに育つ

ここまで考えてくると、Relationというものが、単に「仲良くすること」ではないことが見えてきます。

Relationとは、人と人、あるいは国と国との「あいだ」に生まれる関係性のことです。
そして、その関係は、いつも同じ形であるとは限りません。
時間とともに変わっていきます。

幼い子供と親の関係も、子供の成長とともに変わっていきます。
先生と生徒の関係も、生徒の成長とともに変わっていきます。
国と国との関係も、時代の変化とともに、新しい協力の形が生まれていきます。

大切なことは、その変化を、関係が薄くなったとか、関係が悪くなったとか、単純に決めつけないことです。
むしろ、変化するからこそ、関係は育つ。

良いRelationは、一度つくった関係を固定することではありません。
互いの変化に合わせて、「あいだ」を育て続けることなのではないでしょうか。

ここには、「時間」という要素もあります。

昨日まで必要だった関係の形が、今日も同じように必要とは限りません。
今日、良いと思っている関係の形も、明日には変わっているかもしれません。
だからこそ、私たちは、その都度、問い直していく必要があるのだと思います。

7 今日の問い

私たちは、良い関係を築こうとするとき、つい「もっと近づこう」と考えます。
もっと知り合おう、もっと理解し合おう、もっと一緒に何かをしよう。
よくあることです。

もちろん、それらは素敵なことだろうと思います。
けれど、今日、考えてみたいのは、その先です。

近づくことで育つ関係もあれば、それぞれの歩みを尊重することで育つ関係もあります。
少し離れて見守ることで、相手が成長することもあります。

それぞれの立場を尊重することで、新しい協力関係が生まれることもあります。
違いを無理に消そうとしないことで、かえって豊かな結びが生まれることもあります。

このように考えると、大切なのは、近づくか離れるかという二者択一ではないことがわかります。
大切なことは、互いが自分らしくありながら、どのような未来を共につくっていけるのか、という観測点を持つことなのだと思います。

互いに自分らしく生きていけることを願う。
互いの違いを認め合い、それぞれの歩みを尊重しながら、必要なときには力を合わせる。
そんな関係を、育てることができたら良いですね♪

PS:
そういえば、3日間の出張に際して、ウチのワンちゃんをペットホテルに預けていったのですが、ワンちゃん、下痢してしまいました。
きっと置いてけぼりで、寂しかったのでしょうね。
今朝もまだ下痢(笑)。すぐには治らない(笑)
おかげさまで今朝は超元気、超ハイテンションで家中を走り回っています。
ただし、床に下痢便を撒き散らしながら・・・。
Relationは回復したのですけどね、床の平和は崩壊しました(笑)

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