目の前の問題に直面すると、私たちは「いま、どうすればよいか」と必死に考えます。けれど、出口が見えないまま懸命にもがけば、かえって出口から遠ざかってしまうことがあります。幼い頃、海で溺れた私は、水面に出ようとして、なぜか必死に海底の砂を掘っていました(笑)。では、どちらが水面なのかを知るにはどうすればよいのでしょうか。大切なことは、まず「出口」を見つけることです。「最後に、どうなっていたいのか」から、いまの自分を見る。未来から今日を見つめ直す「出口設計(Exit Design)」について、今回は私自身の小さな体験から考えてみたいと思います。

今日のひとこと・出口を考えるとは、未来から今日を見つめ直すこと。

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出口を考えるとは、未来から今日を見つめ直すこと。

これは「出口設計」の核心を、とても短く表した言葉です。
「いま、どうするか」から未来を見るのではなく、
「どんな未来にしたいか」から、いまを見る。
これは、発想の反転です。

私たちは何か問題にぶつかると、つい「いま、どうすればよいか」を考えます。
もちろん、それも大切なことですが、目の前の問題だけを見ていると、どうしても、その場を切り抜けることばかりに心を奪われがちです。

誰が正しいのか、誰が間違っているのか。
何が正しいのか、何が間違っているのか。
どうすれば勝てるのか、どうすれば損をしないのか。
どうすればうまく行くのか。

こうした目の前の出来事だけに集中すると、その先にどんな未来が待っているのかが、見えなくなります。

そこで、いったん観測点を未来へ動かしてみるのです。
それが出口設計(Exit Design)でいう、
「最後に、どうなっていたいのだろう?」です。

家族なら、十年後もみんなが笑って食卓を囲んでいたい。
会社なら、働く人も、お客様も、取引先も、「この会社があってよかった」と思える存在になっていたい。
地域なら、子どもたちが大人になったとき、「ここで育ってよかった」と思える場所にしておきたい。
国なら、次の世代の人たちが、安心して夢を描ける国を手渡したい。

そうした未来の姿を先に思い描いてから、もう一度「いま」を見ます。
すると、不思議なことに、出来事の見え方が変わります。

いま言おうとしている、このひと言は、その未来につながるだろうか。
いま選ぼうとしている、この方法は、本当にその未来を育てるだろうか。
いま争っている、この勝ち負けは、十年後にも大切なことなのだろうか。

出口を考えることは、「ゴールを決める」ことではありません。
観測点を未来へ移し、そこから現在を見つめ直すことなのです。

私たちは普通、現在から未来を見ています。

現在 → 未来

けれど出口設計では、その向きをいったん反転させます。

未来 → 現在

「いまの延長線上に、どんな未来が来るだろう」と考えるのではなく、
「こんな未来を育てたい。そのために、今日の自分は何を選ぶのか」
と考えるのです。

未来は、ただやって来るものではありません。
今日の小さな選択が重なり合い、やがて未来の形になっていきます。
だから、未来を考えることは、今日を大切にすることです。

いま起きていることに右往左往しているだけでも、時間は過ぎていきます。
けれど、それが右往左往しているだけなら、もがいているだけで、かえって情況を悪化させているかもしれません。

まだ、小学校に上がる前のことです。
海水浴に行っていて、海でおぼれたことがあります。
深さ60センチくらいの浅瀬です。
そこに顔の上になるような大きめの波が来た。
で、波に押されて姿勢を崩して、おぼれたのです。

そのときのこと、いまでもよく覚えています。
顔が海に浸かっていて、息ができずに苦しくて、怖くて、助かろうとして、必死に両手をかきむしるようにしました。
すると、眼の前が砂煙になりました。

母に腹を抱きかかえられて、救われました。
様子を聞いたら、後頭部と背中が水の上にでていて、下を向いて海底の砂を必死にかきむしっていたのだそうです。
なんと、水面に出ようとして、海底を掘っていたのです(笑)。

未来を見ずに、いまだけを見ていることは、これに似ています。
どっちが水面かわからずに、助かろうとして必死に海の底の砂をかきむしる。
息ができない恐怖に襲われ、砂混じりの海水を大量に飲み込む。

ダイビングをしていて、海でおぼれかけたときには、とにかくパニックにならずに、まず自分の息から生まれる泡が、どっちに向かっているかを、しっかり見なさいと教えられます。
泡が上がっている方向に水面があるからです。

この水面が「出口」です。

だから出口というのは、遠い未来を夢見ることではありません。
出口から見る=未来から振り返る。
そのときに、
「あのとき、こちらを選んでよかった」
「あの日の、あのひと言があってよかった」
と思える「今日」を選んでいくことです。

出口設計とは、未来を決めつけることではありません。
最後にどんな景色をみんなで見たいのかを思い描き、
その未来にふさわしい今日を選び直していくことです。

その積み重ねの先に、最後にみんなが笑顔になれる未来が育っていくのだと思います。

——今日も良い一日を♪

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