誰かが間違ったことをしたとき、私たちはつい「あの人は悪い人だ」と、その人自身まで決めつけてしまいます。けれど、「なぜ、その人はそうしたのだろう?」と観測点を動かしてみると、それまで平面的だった人の姿に、時代や環境、人との関係、恐れや願いといった奥行きが見えてきます。理解することは、肯定することではありません。善悪を曖昧にするのではなく、その先にある「では、どうすれば同じことが起きないのか」を考える。そこから未来への出口設計が始まります。

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「善か悪か」と問う前に、「なぜそうしたのだろう」と観測点を動かすと、人の姿は少し立体的になる。
私たちは、誰かが約束を破ったり、嘘をついたり、怒ったり、人を傷つけたり、逃げたり、裏切ったりすると、ついその行動を「良い」「悪い」で判断してしまいがちです。
さらにそこから、「あの人は悪い人だ」と、その人自身まで決めつけてしまうことがあります。
もちろん、してはいけないことはあります。
人を傷つけてよいという話ではありませんし、悪い行為まで「仕方がなかった」で済ませればよいという話でもありません。
ダメなものはダメです。
ただ、ここで少しだけ、観測点を動かして、
「なぜ、その人はそうしたのだろう?」
と考えてみます。
なにしろ、頭は生きているうちに使わなければもったいない(笑)。
たとえば、いつも怒っている人がいたとします。
その姿だけ見れば、短気な人であり、怖い人であり、性格が悪い(笑)と見えるかもしれません。
けれど、その人がずっと何かを恐れていたとしたら、どうでしょう。
馬鹿にされたくない。
見捨てられたくない。
負けたくない。
自分を守らなければならない。
そんな恐怖を抱えたまま生きてきた人であれば、その「怒り」は、もしかすると自分を守るために身につけた鎧なのかもしれません。
もちろん、だから怒鳴ってよいわけではありません。
ここは、とても大切なところです。
「理解すること」と「肯定すること」は違うのです。
人を傷つける行為は、止めなければならないこともあります。
必要なら、きちんと責任を問うことも必要です。
けれど、「この人は悪い」だけで終わらせてしまうと、その人がなぜその行動に至ったのかという、もっと大切なものが見えなくなることがあります。
これは歴史を見るときも同じです。
「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」:信長
「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」:秀吉
「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」:家康
有名なホトトギス三首です。
もちろん、これは三人が実際に詠んだ歌ではありませんが、後世、それぞれの人物像を端的に表すものとして知られるようになりました。
それぞれ、信長は短気で激しい気性、秀吉は才知恵で工夫する様子、家康は粘り強い忍耐力を表わすとされます。
けれど、この三人は、ほんとうに「それだけ」の人だったのでしょうか。
歴史上の人物を、「英雄だった、悪人だった」と一言で決めてしまえば、とてもわかりやすくなります。
けれど、人はそんな平面的な存在ではありません。
その人が生きた時代背景があり、家族があり、仲間があり、敵がいて、恐怖があり、願いがあります。
その人なりに守ろうとしたものがあります。
人の行動は、その人というEntityだけから生まれているのではなく、周囲とのさまざまな**Relation(関係性)**の中から生まれます。
**「この人は善か悪か」**という問いだけでは、人間の一面しか見えない。
だから、**「なぜ、この人はそうしたのだろう?」**と問いを立てるのです。
すると観測点が、その人の「行為」から、その行為が生まれた「Relation」へと少し動きます。
点だった人物が、線になり、面になり、やがて立体になります。
これは、いわゆる歴史研究とは異なります。
歴史研究は、遺物遺構文献史料から、過去に何があったのかを探ります。
観測点の移動は、あくまで過去の歴史に学ぶ姿勢です。
こうすることで、過去の人の姿が立体的に見えてきます。
だから、史実を材料に観測点を動かし、そこから現代を生きる智慧を得ようとしているのです。
そしてここに、もうひとつ、
**「では、どうすれば同じことが起きないのか?」**という問いが生まれます。
ここまで来ると、善悪の話は「誰が悪いか」という入口論争から、
未来をつくる出口設計(Exit Design)へと変わります。
誰かを悪者にして終わるのではない。
悪い行為を曖昧にするのでもない。
なぜ、それが起きたのか。
その「あいだ」に何があったのか。
そして、どうすれば次はもっと良い未来につなげられるのか。
善悪二元論ではなく、人という存在を、もっと深く見る。
そのために、ときどき観測点を動かすのです。
だから、
「あの人は悪い人だ」と思ったときこそ、
**「なぜ、そうしたのだろう?」**と、もうひとつ問いを置いてみます。
すると、それまで見えなかった景色が見えてきます。
そしてその景色は、必ず、より良い未来を啓く智慧になるのだと、私は思っています。
——今日も良い一日を♪
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